B6C3F1マウスに、X線(1.6Gyx4回)、エチルニトロソウレア(ENU:400ppmの飲料水を6週間投与)を処理し、T細胞白血病を誘発した。発生率は、それぞれ、62%と56%であり、自然発生率(7%)と比較して、高かった。発生した白血病からDNAを抽出し、まず、がん抑制遺伝子の存在と関連するヘテロ接合性の消失(LOH)を58座位について調べた。その結果、以下のことが明らかとなった。(1)58座位中に一カ所でもLOHをもつ腫瘍の頻度は、X線誘発、ENU誘発、自然発生腫瘍で、それぞれ、86%、45%、38%であった。また、LOHをもつ染色体の平均数は、2.4、0.6、0.9であり、X線誘発腫瘍はLOHを多く持つ、(2)LOHが高発する染色体は、11番、12番、4番、19番であり、特に、11番と12番は、X線誘発腫瘍に特異的に多く観察される、(3)11番染色体の共通LOH領域の近傍には、がん関連遺伝子がいくつか存在するが、その中でリンパ球のマスター転写因子であるIkarosがマップされた、(4)Ikaros遺伝子の発現異常をRT-PCR法で調べたところ、発現していない腫瘍が14%、短いフォームのトランスクリプトを発現しているものが11%存在した、(5)11番染色体には、p53がん抑制遺伝子もマップされているが、p53の突然変異率は、〜10%と低かったなどが明らった。現在、Ikaros遺伝子の塩基配列レベルでの突然変異を検討中である。
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