B6C3F1マウスに、X線(1.6Gy×4回)、エチルニトロソウレア(ENU:400PPmの飲料水を6週間投与)を処理し、T細胞白血病を誘発した。昨年、X線誘発TLに特異的に観察されるヘテロ接合性の消失(LOH)が11番染色体のセントロメア領域に存在すること、そこに、その中でリンパ球のマスター転写因子であるIkarosがマップされたことを報告した。本年、X線誘発TLとENU誘発TLのIkaros遺伝子の突然変異を解析し、以下の結果を得た。X線誘発TLでは、Ikarosは、発現なし、スプライス異常、点突然変異などの異常が〜50%のTLに観察されたが、ENUでは、点突然変異のみが約10%のTLに観察されたのみであった、点突然変異の解析から、X線誘発TLとENU誘発TLともに、変異はDNA結合領域に集中していた。 しかし、X線誘発TLは、正常Ikaros遺伝子がない(LOHを伴う)のに対し、ENU誘発TLは、変異Ikarosとともに、正常Ikarosも発現しており、後者の変異Ikarosは、正常Ikarosも阻害するドミナントネガティブ型であることが示唆された。以上の結果は、Ikarosの変異、特に、LOHを伴うIkaros変異が、放射線誘発TLに特徴的であり、発がん剤によって、Ikarosの関与が異なることを示すと考えられる。 また、加齢個体(生後6ヶ月齢)にX線誘発したTLにおいて、第11番染色体のLOHは、〜20%で、若い個体に誘発したTLに比べ、有意に低かった。また、Ikarosの変異も、15%のTLに異常があったのみであった。一方、K-rasの変異は、加齢個体のTLで31%(若い個体のTLは、17%)で増加していた。異常の結果は、加齢によって、発がんメカニズムが変化していくことを示唆しており、Ikaros変異の放射線特異性は、若い個体のTLに特徴的であると考えられた。
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