B6C3F1マウスに、X線(1.6Gy×4回)、エチルニトロソウレア(ENU:400PPmの飲料水、6週間)を処理し、T細胞白血病(TL)を誘発した。昨年、X線誘発TLでは、Ikaros遣伝子の変異が50%にみられ、そのほとんどは、Ikaros遣伝子領域のヘテロ接合性の消失(LOH)を伴うものであった。一方、ENU誘発のTLでは、Ikarosの変異は10%で、そのほとんどは、LOHを伴っていなかった。一方、K-rasの突然変異はどちらも、20%程度で大きな差はなかった。本年は、p15遺伝子のプロモーター領域のメチル化の程度を比較した。 近年、ヒトのT細胞白血病で、癌抑制遣伝子であるp15遣伝子の発現がプロモターのメチル化によって抑制されていると報告され、その後、マウスのTLでもp15遣伝子のメチル化が報告された。そこで、X線誘発とENU誘発のp15のメチル化を塩基配列レベルで比較した。その結果、X線誘発TLでは、14例中7例(50%)にメチル化が観察されたが、16例中2例(13%)のみであった。また、X線誘発TLでは、調べたCpGのほとんどがメチル化しているサンプルもあり、X線誘発TLは、ENU誘発TLに比べp15のメチル化の程度が高いことが明らかとなった。さらに、X線誘発でのみメチル化しているCpGがあり、このメチル化も放射線TLのマーカーになる可能性が示唆された。今後、ENUによる発がんの原因遣伝子を同定しなければならないが、今回の研究でIkarosの突然変異やp15のメチル化が、放射線発がんのマーカーとなる変化であることが示唆された。
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