【目的】高齢者における睡眠・覚醒障害の実態を把握し、光環境との関連を明らかにする。 【対象と方法】平成12年度は札幌市内の老人病院に入院中の高齢者を対象に、一週間連続して調査票による睡眠状態の評価を行った。そのうち、文書による同意を得られた睡眠障害をもつ高齢者について昼食時に8000ルクス1時間の光付加を行った。7月末から10月初旬まで、夏季にあたる9週間を、3週間毎に、日常生活の照度下(1000ルクス以下)で過ごす前光照射条件(前条件)、次に光照射条件(中条件)、再び、日常生活の照度下で過ごす、後光照射条件(後条件)と設定し、10症例に同時にプログラムを行った。いずれの条件でも、毎週月曜日から金曜日までの5日間、午前11時半から12時半の1時間を、被験者は看護者とともに、光療法室で過ごすようにした。睡眠評価尺度、睡眠脳波、活動量、眼科的所見について検討を行った。平成13年度は同上の実験を冬季にあたる10月下旬から12月にかけて行った。 【結果】入院高齢者のうち、約9割に中途覚醒をはじめとする睡眠・覚醒の障害が認められた。夏季における光付加の結果は、睡眠尺度によると、入眠、中途覚醒、早朝覚醒、午前の眠気の項目で、中条件では前条件ならびに後条件と比較して、評価点が低下、すなわち改善しており、特に午前中の眠気と入眠については中条件下で統計学的に改善する傾向が認められた。睡眠脳波が検討可能であった4例では、睡眠時間が短縮するとともに、全例で睡眠段階2が増加していた。活動量については、10例中4例で、夜間の活動量が低下する傾向が認められた。冬季における光付加の実験では9症例中3症例において睡眠尺度評価における有意な変化が認められた。その内訳は入眠潜時の短縮1例、午前の眠気2症例であった。睡眠ポリグラフの結果はこれらの所見を裏付けるものであった。 実験の前後で行った眼科的検索では、光付加による明らかな変化は認められず、高照度の光付加は高齢者の眼科的昨日に悪影響を及ぼさないことが確認された。
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