2001年度は2000年度に引き続き、臨床例の調査を行った。調査対象は、児童精神科医が診療している医療機関4施設を多動や不注意が問題となり受診し注意欠陥/多動性障害(ADHD)と診断された症例117例と広汎性発達障害と診断された13例である。この対象に、親用の構造化面接フォームと学校用の評価尺度であるADHDRSとODDRSを施行した。ADHDの症例の診断の内訳では、ADHDの混合型が67例と最も多く、ついで不注意優勢型で45例であり、多動-衝動性優勢型は5例と少なかった。 担任教師が評価したADHDRSの結果は、ADHDRS全体では、総得点の平均が27.8であり、多動性-衝動性の得点の平均が12.0、不注意の得点の平均が15.9であった。混合型の場合、総得点の平均が31.0であり、多動性-衝動性の得点の平均が14.4、不注意の得点の平均が16.6であった。不注意優勢型では、総得点の平均が22.7、多動性-衝動性の得点の平均が7.8、不注意の得点の平均が14.9であった。多動性-衝動性優勢型では、総得点の平均が31.6であり、多動性-衝動性の得点の平均が16.4、不注意の得点の平均が8.1であった。広汎性発達障害の症例では、総得点の平均が31.2であり、多動性-衝動性の得点の平均が12.9、不注意の得点の平均が18.3であった。これらの数字は、山崎が報告している一般小中学生の平均値と比べると著しく高く、ADHDRSがADHDのスクリーニングの目的に使える可能性が高いことを示している。ただし、広汎性発達障害のうちで多動性-衝動性や不注意の症状を示すものを拾い上げる可能性が高いことも明らかになった。ADHDと診断された117例のうち、反抗挑戦性障害(0DD)と診断されたものは50例あり、その50例の0DDRS得点は、非ODD例に比べて有意に高く、0DDRSにより0DDの傾向を推測できることが示された。2002度は、中学校・小学校での調査を行う予定である。
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