研究概要 |
開放隅角緑内障の原因として、ミオシリン遺伝子が発見され、その後多くの遺伝子変異が報告されている。我々は、日本人におけるミオシリン遺伝子変異について検討した。山梨医科大学緑内障外来、当科関連病院眼科外来に通う原発開放隅角緑内障(以下POAG)患者119例、正常眼圧緑内障(以下NTG)患者114例、非緑内障control患者100例より、同意を得た後採血し、DNAを抽出し、Polymerase chain reaction-single strand conformation polymorphism(PCR-SSCP法)によりミオシリン遺伝子変異の有無を検索し、遺伝子変異症例に対し、シークエンスを行って変異を同定した。解析の結果、Promotor1-83G→A21例(NTG4, POAG10, control7)、Arg46Stop1例(NTG)、Arg76Lys21例(NTG4, POAG10, control7)、Thr123Thr2例(POAG1, control1)、Arg158Gln3例(NTG1, POAG1, control1)、Asp208Glu8例(NTG4, POAG3, control1)、Pro481Ser1例(control)、Ala488Ala3例(POAG1, control2)、1515+20G→A1例(NTG)のミオシリン遺伝子変異がみられ、5つのアミノ酸変異を含んでいた。Pro481Serは、これまで報告のない新しい変異であった。Arg46Stopは、今回の解析ではNTG患者にのみ認められたが、これまで、POAG、非緑内障患者にも認められると報告されている。Arg76Lysは、各群における頻度に明らかな差はなく、緑内障発症との関連は低いとするこれまでの報告を指示するものであった。また、Arg76Lysは、Promotor1-83G→Aを必ず伴っており、これはアジア人に特有であると思われた。Arg158Glnは、leucine zipper-like motif領域における唯一のアミノ酸変異であり、これまで12才NTG患者にのみ認められ、原因遺伝子変異の可能性が高いと報告されているが、非緑内障患者にも認められ、各群における頻度からも緑内障発症との関連は低いと考えられた。Asp208Gluは、NTG4例、POAG3例、非緑内障患者1例に認められ、非緑内障患者と比べ緑内障患者にその頻度が高い傾向があり、かつ、この変異をもつ非緑内障患者のみが、Pro481Ser変異も同時にもっていたため、緑内障発症への関与を否定できないが、これまで非緑内障患者100例中5例にAsp208Gluを認めたとの報告があり、関連は低い可能性が高いと思われた。
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