研究概要 |
平成4年度に調査し、有効回答のあった65歳以上のS市在住の一般高齢者1,405人(抽出率:21.0%)と市が民生委員を通じて把握しているひとり暮らし老人535人(93.9%)を観察コーホートに設定し、平成10年3月末までの動態を住民票の照会により調査を行った。生存者は一般高齢者1,009人(71.8%)、ひとり暮らし老人393人(73.5%)であり、一般高齢者の中から50%を無作為抽出し、またひとり暮らし老人は全員を対象として、健康状態、障害度、社会・生活形態、家族・友人との交流、住居の状況、保健・医療・福祉サービスの利用状況などの変化について調査を行った。有効回答は一般高齢者、ひとり暮らし老人のそれぞれ403人(80.6%)、312人(79.4%)から得られた。 Coxの比例ハザード・モデルを用いて生命予後と関連する要因を検討すると、一般高齢者、ひとり暮らし老人のいずれにおいても、コーホート設定時の年齢、健康状態、障害度は生命予後と正の関連を示し、一方、健康診査の受診や健康づくりの実践、社会活動への参加、生きがい感の保有は生命予後と負の関連を示した。また、ロジスティックモデルを用いて観察期間における健康状態、社会的活動の変化と関連する要因を検討すると、障害度の悪化、心疾患、あるいは関節炎などの関節障害の発症は健康状態の悪化と正の関連を示し、障害度の悪化、生きがい感の喪失、将来に対する不安の保有は社会活動の喪失と正の関連を示した。以上の成績は、身体的機能の低下とともに、精神的な要因の変化が高齢者のアクティブ・ライフの喪失と密接な関連を有することを示唆するものである。 平成13年度、同14年度には上記の観察コーホートを対象として、高齢者の転帰、および身体機能、社会的状況などの推移を調査し、アクティブ・ライフの保持、および喪失と関連する要因について分析を行う。
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