研究概要 |
島根県農村地域において、食行動およびウオーキングによる健康づくり教室に参加した平均年齢51.4歳の女性を対象に空腹時採血を行った。EDTA添加により採取した血漿をGriffinら(1990)の方法により超遠心し、VLDL,LDL-I,-II,-IIIに比重によりリポ蛋白毎に分画した。デジタルカメラ画像の黄色の最も濃い分画を同定し(LDL比重)、分取して蛋白および脂質の測定を行った。また、マルチゲル-リポ(第一化学薬品)によりLDLを分離し(LDL径)大、中、小の3類型に分けた。LDL比重の最も軽いLDL-Iが最も濃かった群は、LDL径の大径群が最も多く、LDL比重の最も重いLDL-IIIが最も濃かった群は、LDL径の小径群が最も多く、両者はよく相関していた。LDL径と各リポ蛋白重量(蛋白、リン脂質、コレステロール、中性脂肪の合計)では、LDL径の中径群に対して、大径群のVLDLとLDL-III重量が有意に低下し、小径群のVLDLとLDL-III重量が有意に増加していた。LDL径によりLDL-I重量は変化せず、LDL-IIはLDL径が小さくなるほど増加したが有意な差ではなかった。LDL比重とリポ蛋白重量も同様な傾向を示した。LDL径と血清脂質との関係では、リン脂質、総コレステロールには有意差がないが、中径群に比較して大径群は、LDLコレステロールと中性脂肪が有意に減少し、HDLコレステロールが有意に増加していた。小径群は、中性脂肪が有意に増加し、HDLコレステロールが有意に減少していた。超遠心法とゲル電気泳導法によるLDLの分布にはよい相関性があり、疫学調査にはゲル電気泳導法が簡便で有用性が高いことが明らかになった。また、小径LDLは、VLDLとLDL-III重量、中性脂肪が有意に増加し、HDLコレステロールが有意に減少しており、Multiple Risk Factor Syndromeのよい指標と考えられた。
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