1.実験系の確立 再現性良く、なおかつ簡便にm-xyleneをラットに曝露する方法を開発し、それを用いてラットにm-xyleneを曝露した。 2.GABA_A受容体の変化の観察 [^<35>S]t-butylbicyclophosphorothionate(TBPS)を用いたオートラジオグラフィーでは、小脳において有意な変化を観察した。[^3H]flunitrazepamを用いたオートラジオグラフィーでは有意な変化は見られなかった。GABA_A受容体のサブユニットに特異的な変化を検索するために、[^3H]Ro15-4513によるオートラジオグラフィーを行った。その結果、α_6サブユニットに特異的な変化が小脳の顆粒細胞において検出された。またm-xyleneの曝露による影響は大脳皮質(思考、運動)、海馬(記憶)、下丘(聴力伝導路)、小脳(協調運動)などの部位に及ぶことを見出した。 3.脳内各部位の有機溶剤濃度の測定 従来行なってきた材料・方法により、曝露時間と脳内有機溶剤濃度の関連を検討した。 4.曝露時、および曝露後の尿中代謝産物(m-メチル馬尿酸)の濃度変化の観察 脳内のm-xylene濃度と尿中代謝産物(m-メチル馬尿酸)濃度の経時変化は曝露時に平行していることがわかった。 以上のことからm-xylene曝露時の脳内のGABA_A受容体で起こる変化を影響指標、尿中のm-メチル馬尿酸を曝露指標とした生物学的影響モニタリングの手法を開発するための基礎データが得られた。今後は、組織内m-xylene濃度の測定法を改良するとともに、m-メチル馬尿酸に加えて、m-メチルトルアルデヒド(代謝中間体)の測定も視野に入れた、生物学的影響モニタリングの手法の開発・実用化を目指したい。
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