研究課題
本研究は、C型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染者(HCVキャリア)の病態の経年的変化(自然史)を、様々な病期にあるHCVキャリアの病態の経年推移を基礎データとして用いることにより、数理モデル(マルコフモデル)化して提示し、さらに、肝がん死亡の減少を目的とした健診・治療などの有効性を客観的に評価することを目指すものである。本年度得られた結果は次の通りである。1.【HCVキャリアの自然史のモデル構築】HCVキャリアの自然史のモデルについて、HCVキャリア・慢性肝炎・肝硬変・肝がん・治癒という大まかな5つの病態を設定し、肝がんを終末像とするモデル(マルコフ過程に基づく確率モデル)を構築した。2.【HCVの持続感染による肝病態(病期)の自然経過の解析-1】献血を契機に見出されたHCVキャリア集団942例の病院受診時の病態及びその後の病期・進展を調査・解析しデータベース化した。さらに性・年齢・診断・治療等の背景因子の情報について、肝臓専門医の協力のもとにプライバシーの保持を重視しながらデータベース化した。得られた成績をもとに、長期慢性肝疾患の病態推移を推計するための数理モデルの構築を行なった。その結果、40歳時点における無症候性キャリアは、60歳になると男性では約1割(10.6%)「肝がん」へ進展するが、女性では4.5%が「肝がん」へ進展すると推計された。また、男性では60歳以上、女性では70歳以上の年齢層で肝発がん率が著しく高くなる成績が得られた。臨床データと照合し、このモデルの妥当性の評価を行ない、現在資料の追加・修正を行なっている。3.【HCVの持続感染による肝病態(病期)の自然経過の解析-2】C型慢性肝疾患患者として通院・入院している症例1000例の病期と進展を肝臓専門医の協力のもとにプライバシーの保持を重視しながらデータベース化するための調査・解析を行なっている。また、抗ウイルス療法、肝庇護療法を受けた患者を調査し、治癒例とその背景因子の詳細を調査中である。
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