研究概要 |
本年度は、高齢者の生活様式がその後の日常生活動作能力低下に及ぼす影響を、早期死亡との関連を考慮したうえで明らかにした。高知県大月町で、平成3年に実施された生活と健康に関する質問紙調査回答者1,514名のうち、当時、日常生活動作能力6項目(食事、用便、更衣、整容、入浴、歩行)すべてが自立していた1,250名を対象に、現在の健康状態を尋ねる質問紙調査を実施した。追跡調査時にも日常生活動作能力に障害がなかった者は679名、1項目以上で手助けが必要になった者は126名、日常生活動作が不明な者は10名、追跡調査時までに死亡した者は275名、転出者は160名であった。追跡時「死亡」、「日常生活動作能力低下」、「日常生活動作能力維持」の3つのカテゴリーからなる変数を目的変数とし、追跡開始時の生活様式を説明変数とする多項ロジスティック回帰モデルをあてはめて検討した。年齢を調整すると、日常生活動作能力低下のみに有意水準10%で関連する生活様式の項目として、男では「非飲酒」(「時々、または1合未満飲酒」に対するADL低下のオッズ比=2.3、95%信頼区間1.1-4.7)と「隣近所との交流疎」(「密」に対するADL低下のオッズ比=2.2、95%信頼区間1.1-4.3)が、女では、「便通不規則」(「規則的」に対するADL低下のオッズ比=2.1、95%信頼区間1.1-4.1)、「定期的運動習慣欠如」(「週3回以上実施」に対するADL低下のオッズ比=3.2、95%信頼区間0.9-11.1)、そして「親族との交流疎」(「週1回以上接触」に対するADL低下のオッズ比=2.1、95%信頼区間1.2-3.7)が検出された。これらの保健習慣、社会的ネットワークの項目は、高齢者の、機能的健康水準が高い寿命進展の関連要因として意義を持つと考えられる。なお、追跡開始時の生活様式と追跡時の転帰を電算機上で結合するための個人識別情報は、解析用データファイルからは削除されており、倫理的な配慮がなされた研究である。
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