研究概要 |
本研究では、社会文化的環境が異なると考えられる沖縄県と九州本土の高校生を対象に、抑うつ症状に関する疫学的調査を実施することにより、高校生の抑うつ症状の出現に地域差がみられるか否かを確認し、その格差を規定する心理社会的要因および文化的要因を明らかにすることを目的とした。対象は沖縄県および佐賀県全域の全日制公立高等学校に在籍する生徒で、沖縄県14校、佐賀県12校を抽出し、合計約5,300名の生徒に質問紙調査を実施した。抑うつ症状はCES-Dから測定し、心理社会的要因として、怒り、生活ストレッサー、ソーシャルサポート、セルフエスティーム、健康習慣、生活環境を用いた。現時点で入力済のデータ3.845名(沖縄2,790名、佐賀1,055名)を用いて分析を行ったところ、抑うつ平均得点は沖縄18.3、佐賀20.0で、cut-off点をl6とした場合の有症率は沖縄55.8%、佐賀66.9%で、いずれも有意な地域差がみられ、佐賀の方が悪い傾向を示した。心理社会的要因については、怒り、生活ストレッサー、セルフエスティームにおいて佐賀が有意に悪く、逆に、健康習慣と生活環境では沖縄が有意に悪い傾向を示した。ソーシャルサポートには地域差がみられなかった。重回帰分析を用いて、地域別に抑うつ症状に対する心理社会的要因の関連を検討したところ、沖縄では、怒り、生活ストレッサー、ソーシャルサポート、セルフエスティーム、健康習慣が抑うつ症状と有意な関連を示したのに対して、佐賀では、怒り、生活ストレッサー、ソーシャルサポート、セルフエスティームが有意な関連を示した。抑うつ症状と心理社会的要因との関連性にみられた地域差は健康習慣にのみみられ、沖縄では望ましくない健康習慣と抑うつ症状の悪化の関連性が示唆された。次年度は中学生を対象に同様の検討を行う。
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