研究概要 |
【目的】我が国では40歳以上の耐糖能異常者の有病率が10%以上になっており、糖尿病は今や国民病とさえいわれている。そこで、糖尿病の一次予防への一助とすべく、耐糖能異常とがん罹患などとの関連性を検討した。【方法】北海道端野町(1977年から)と壮瞥町(1978年から)で20年以上行っている40歳以上の住民を対象としたコホート研究では、ブドウ糖経口負荷試験による耐糖能検査、血圧、血清脂質、肥満度、喫煙や飲酒の習慣などを経年的に調査している。このたび、がん罹患やがん死亡に関する追跡調査を行い、耐糖能異常の有無とがん罹患・死亡との関連性などをCoxの比例ハザードモデルを用いて検討した。なお、調査研究の実施に当たっては個人のプライパシー保護を厳守し、個人への調査に際しては必ずインフォームド・コンセントを得た。【結果】1,989人(男908人、女1,081人)の調査対象者を2002年12月まで追跡調査したところ、145人(男94人、女51人)ががんに罹患、または、がんで死亡していた。がんの部位では男性では肺23、胃21、結腸7、前立腺7などが多く、女性では胃10、肺6、膵7などが多かった。がん罹患による影響を取り除くために追跡期間が5年未満の者を除いて解析した。その結果、男性においては50gブドウ糖経口負荷後120分の血中グルコース濃度が高いほどがんのリスクが有意に高く(年齢を調整したP for trend,P=0.039)、さらに、喫煙習慣や飲酒習慣を調整因子に加えても同様であった(P for trend,P=0.044)。女性においては有意な関連性はみられなかった。【考察】耐糖能低下と発がんリスクとの有意な関連性がみられたが、インスリン、あるいは、インスリン様成長因子(IGF-Iなど)が病因として示唆される。今後は、さらに症例数を増やした検討が必要であろう。
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