研究概要 |
Siegristらにより提唱されている職業性ストレスモデル「努力-報酬不均衡モデル」による日本語版調査票を開発し,その標準化と日本人の職業性ストレス研究への応用を図っている。 1 多様な対象においてモデルの有用性を検討することを目的として,成果主義を取り入れている大企業から官公庁にまで調査範囲を広げ,以下の項目について検討・確認した: (1)古典的心理特性に基づく尺度の良好な信頼性および妥当性を確認した (2)以上を属性別・社会人口学的指標別に検討し,尺度の標準化に資する基礎資料を作成した (3)日本人を対象とした研究結果をレビューし,自覚症状をアウトカムとした尺度の予測妥当性は良好であることを確認した (4)尺度得点から計算されるストレス指標の暴露レベル(有病率)が日本人就業者集団では低いために,本指標を用いた統計学的パワーが小さく,日本人就業者に適合する新たなカットオフポイントの検討の必要性を認めた (5)項目反応理論を用いた指標による尺度特性の検討を開始した。また,本理論を尺度の国際比較研究に応用するべくデータ収集を開始した 2 尺度と身体データ両者を繰り返し調査し,以下の所見を明らかにしつつある: (1)尺度の測定値が追跡対象のおかれた社会情勢,とくにリストラクチャリングなどに鋭敏に反応すること (2)持続してストレス状態にあるグループは,そうでないグループに比べて,HDLコレステロールや中性脂肪などの循環器疾患危険因子が増悪する傾向にあること。
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