研究課題/領域番号 |
12670375
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
福島 哲仁 福岡大学, 医学部, 助教授 (90208942)
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研究分担者 |
永幡 幸司 福島大学, 行政社会学部, 助教授 (50312765)
嘉悦 明彦 鳥取大学, 医学部, 助手 (70248483)
守山 正樹 福岡大学, 医学部, 教授 (10145229)
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キーワード | 痴呆 / 高齢者 / バリアフリー / クオリティ・オブ・ライフ / コミュニケーション / 音 / 記憶 |
研究概要 |
デイケア施設に通う痴呆高齢者18人、介護者21人、デイケアスタッフ8人を対象に調査を行った。 痴呆高齢者に、「大切なものごと」6項目について直接聞いた。「大切にしているもの」では、お金、家庭が多かった。「大切にしていること」は、自分の健康、家族の健康、自分の役割、人と会うこと等様々であった。「大切な人」は、殆どが家族と答えていた。「大切な場所」は、自宅、デイケア施設が多かった。「大切な時間」は回答が少なく、無回答が10人いた。「大切な思い出」は、死去した家族のこと、働いていた頃、幼い頃等様々であった。これとは別に、「幸せを感じる時」について尋ねているが、助け合って生きる、ふつうに暮らせる、穏やかに暮らせる、感謝して過ごすなどが多かった。また、「人間にとって必要なもの」を単純に聞いてみると、平和、助け合い、優しさなどが多かった。これらの結果から、痴呆高齢者は、「ふつうの生活を継続する」ことを願っており、その条件として、「平和ないしは平穏」「健康」「家族との生活」「助け合う環境」が必要であることが浮かび上がり、これらがクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を考えていく上で重要な指標になるものと思われた。 QOLを指向した痴呆の受容プロセスは、痴呆高齢者、その家族、ケアスタッフそれぞれの関係の中で進行する。受容のプロセスは、「向き合う」ことから始まり、「受容」の段階へと進行することがわかった。「向き合う」段階で、痴呆高齢者は、痴呆による混乱を隠すための言い逃れや異常な行動をしていた自分から脱却するために痴呆と向き合い、その家族は、痴呆という病気ではなく、痴呆によって辛く苦しんでいる人間としての老人と向き合い、ケアスタッフは、自分自身と向き合う。痴呆高齢者とその家族双方の受容を進めて行くためのケアスタッフの働きかけと、スタッフ自身の痴呆の受容プロセスが重要であることが明らかとなった。
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