咋年度開発した過渡呈示刺激システムはPC-DOSで動いていたため、グラフィックボードの性能を十分に発揮できていなかった。今年度は過渡呈示刺激システムをWindowsに移植し、問題点の解決を行った。表示の分解能は、1280×1024と1024×768ドットに1600×1280ドットを加えた3種類で、リフレッシュレートは人間工学的にちらつきを感じない85Hzに統一した。 被験者に対して昨年同様の以下3種類の実験を行った。 第1実験では、ランドルト環を呈示する視距離に対する正答率特性を測定し、そのグラフより正答率100、75、50%の視距離を求める。 第2実験では、ランドルト環を白から黒にフェードインするときの過渡呈示時間に対する正答率特性を、上の3つの視距離について測定した。その結果、ほとんどの被験者で過渡呈示時間が20〜60msの範囲に最小値がある興味ある結果が得られた。 第3実験では、過渡呈示時間が(1)0msの場合、(2)第2実験で得られた最小値の時間の場合、(3)100msの場合の3種類についてランドルト環を呈示し開口方向をジョイスティックで回答してもらう簡単な視覚負荷作業を行い正答率特性の測定を行った。また、視覚負荷作業5回ごとにオートレフラクトメータにより眼屈折力の測定も行った。昨年度は、過渡呈示部をフェードインだけで行ったが、今年度はフェードインとフェードアウトの両方ある場合についても行った。視覚刺激呈示に用いたVDTについては、昨年度はCRTだけであったが、今年度はLCDも加え同様の実験を行った。 その結果、第3実験よりフェードインとフェードアウトの両方の時間を(2)の過渡呈示時間が最小値になる時間に設定するとさらに正答率が下がらない(疲労が少ない)傾向が今年度確認できた。また、CRTに比べLCDの方が正答率が下がらない(疲労が少ない)傾向も確認できた。
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