昨年度、Windowsに移植した過渡呈示刺激システムにおいて、CRT画面輝度の過渡制御がリニアでないことが分かったので、その修正を行った。昨年同様の実験を行い、システムの修正効果の検討を以下の実験で行った。 自覚的な評価は、被験者にランドルト環を呈示し開口方向をジョイスティックで回答してもらい、その正答率で行った。また、これを視覚負荷作業とした。 第1実験では、実験に最適な正答率75%の視距離を求める。 第2実験では、ランドルト環をフェードイン・アウトする過渡呈示時間に対する正答率特性を測定した。その結果、ほとんどの被験者で過渡呈示時間が20〜60msの範囲に最小値がある結果が得られた。 第3実験では、過渡呈示時間が(1)0msの場合、(2)第2実験で得られた最小値の時間の場合、(3)100msの場合の3種類について視覚負荷作業を行った。 結果は、全ての実験において過渡呈示刺激をリニア、ノンリニアに制御することがほとんど関係ないことが分かった。つまり、指定時間内に過渡的な輝度変化があれば効果があると言える。 今年度は新たに過渡呈示刺激に対する視覚誘発脳波(VEP)の測定システムを構築し、2種類のVDTについて前述の自覚的な結果と比較検討を行った。 呈示画像は市松模様を用い、過渡呈示時間は前述の(1)〜(3)の3種類で、VEPの検出には同期加算法を用いた。 結果は、過渡呈示刺激時間によりVEPの検出電位の低下と位相の遅れがあることが確認できた。(1)と(2)の場合で顕著な差が現れたが、(2)と(3)の場合では大きな差は現れなかった。また、CRTとLCDとで比較するとLCDの方がVEPの電位は小さいことが分かった。 以上から、VDTに画像を呈示する場合、過渡呈示することで脳の視覚野への刺激を少なくでき、疲労を低減できることが確認できた。また、CRTに比べLCDの方が更に疲労を低減できることも確認できた。
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