研究概要 |
背景・目的:高齢者の老化を遅らせる条件として身体の良好な栄養状態を維持することが必須である.本介入研究の目的は,自治体が行う住民サービス事業を基幹として展開した自立高齢者の栄養状態改善による老化遅延のための介入プログラムの効果を評価することにある.対象と方法:対象地域は,秋田県南外村である.介入集団は同村に在住する65歳以上の地域在宅高齢者,男性360名,女性491名,計851名である.平均年齢は全体で71.7(±5.4)歳である(男性71.3±5.2歳,女性72.0±5.5歳).介入期間は,2000年7月から2002年7月までの2年間である.介入による食品摂取習慣と身体栄養状態の変化を観察するため介入前後に,医学検診と面接アンケート調査を行った.食品摂取習慣の変化は,10食品群の食品摂取頻度調査により把握した.身体栄養指標は,血清アルブミンを測定した.介入効果は,介入プログラムに頻回に参加した参加群と参加しなかった不参加群に区分し指標変数の変化を比較し評価した.介入プログラムは164回行われ,延べ5392名が参加した.結果:75歳以上において,男性,参加群で肉類摂取頻度が有意に増加していたのに対し,不参加群では不変であった.同年齢層の女性の参加群では不変であったのに対し,不参加群では有意に低下した.介入集団全体で参加群,不参加群とも油脂類摂取頻度の有意な低下が認められた.血清アルブミンは介入対象全体で参加群,不参加群ともに有意な低下は認められなかった.結論:本介入研究により,75歳以上男性で肉類摂取頻度における介入効果が認められた.開発された高齢者の低栄養予防のための食生活指針の実行可能性が実証できた.
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