研究概要 |
愛知県がんセンター病院を受診した乳がん患者と非がん女性患者を対象にして、女性ホルモン代謝酵素の遺伝子多型に関する症例対照研究を行った。参加者より、文書による遺伝子多型測定の同意を得て採血を行い、簡戦性活歴についても聴取した。採血された血液よりバフィーコートを取り、これよりDNAを抽出し、PCR-RFLP法により遺伝子型を決定した。 平成12年度に引き続き平成13年度には女性ホルモン合成に必要なcytochrome p450 19(CYP19)と、女性ホルモン受容体と結合するIL-1βの遺伝子IL-1Bの遺伝子多型についての検討を行った。 CYP19には、intron 5の4-bp VNTR、Trp39Arg、Arg264Cysなどの多型が報告されている。われわれは、日本人女性で乳がんリスクとの関連が報告されたTrp39Argについてその関連が再現できるかを検討した。乳がん患者239人ではT/T型218人、T/C型21人、C/C型0人であり、非がん患者185人ではT/T型165人、T/C型20人、C/C型0人であった。T/C型+C/C型はそれぞれ8.8%と10.8%であり、有意な差は認められなかった。 IL-1Bには、C-511T, C-31T, C3954Tの3つの一塩基置換多型があり、electrophoresis mobility shift assayでは-31Tにより強く転写因子が結合することが報告され、T型でIL-1βの産生が高いことが想定される。乳がん患者231人と非がん女性患者186人での比較では、症例にT/T型が少なく、C/C型に比べ相対危険度は0.54(95%信頼区間0.33-0.90)で有意に低く、閉経後女性については0.29(0.14-0.61)であった。エストロジェンが低下する閉経後女性で影響が強いことは生物学的に知見に一致した。
|