日本人に高頻度に認められる中程度の高トリグリセリド(TG)血症(IV型高脂血症)は、動脈硬化性心疾患(CHD)の危険因子と考えられている。高TG血症は、リポ蛋白リパーゼ(LPL)遺伝子と肝性トリグリセリドリパーゼ(HTGL)遺伝子異常ヘテロ接合体の遺伝素因と環境因子(肝臓でのTG合成を亢進する因子:アルコール多飲や高インシュリン血症等)の負荷で発症する。まず、LPL遺伝子ヘテロ接合体の異常部位を自動DNAシークエンサーで、解析できる系を確立した(論文1)。この確立した系を用いて、日本人の高TG血症を呈する患者から新たに3種類のLPL遺伝子異常、F270L、G105R、D204Eを検出した(論文2と3)。これらLPL遺伝子異常とLPL機能不全との関連をCOS細胞でのLPL遺伝子発現実験にて確認した結果、3例ともLPL活性がゼロになることが判明した。LPL遺伝子異常による高TG血症は、負荷する環境因子によって増悪する場合があるが、今回、妊娠により血清TG値が激しく変動することを認めた(論文4)。女性のLPL解析結果は、LPL遺伝子異常の有無の早期診断が、極めて臨床的に重要であることを意味している。HTGL遺伝子解析を確実にするためには、まず血中のHTGL酵素の異常の有無を解析することが必須なので、ヒトのHTGLに対するマウスのモノクローナル抗体を2種類作成し、サンドイッチ-EISA法を確立した(論文5)。
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