日本人に高頻度に認められる中程度の高トリグリセリド(TG)血症(IV型高脂血症)は、動脈硬化性心疾患(CHD)の危険因子と考えられている。高TG血症は、リポ蛋白リパーゼ(LPL)遺伝子異常ヘテロ接合体の遺伝素因と環境因子の負荷で発症する。それ故、LPL遺伝子異常ヘテロ接合体を早期診断することは、動脈硬化症に対する予防医学的に重要な課題である。LPL遺伝子診断を可能にするDNA診断チップの開発には、LPL遺伝子変異の集積が必須である。本研究により得られた成果を、以下に示す。(1)LPL酵素蛋白異常を検出するために必要なELISA法の開発およびLPL遺伝子異常ヘテロ接合体を検出する為の直接塩基配列法の改良を行なった。(2)開発・改良した方法を用いて、高TG血症者から新たに4種類の未知変異、G105R、F270L、G154V、イントロン8の5'側2番目のt→c変異(Int8/5'-dss/t(+2)cを見い出した。また、既存のLPL変異として、D204Eを集積した。ミッセンス変異、G105R、F270L、G154V、D204E、についてはLPL酵素機能を失う原因変異であることをCOS-1細胞の発現系にて確認した。これらのLPL変異のヘテロ接合体者は、粗悪な生活習慣(運動不足による高インシュリン血症)の合併で、高TG血症になることが判明した。(3)本研究成果を含め、現在、日本人から15種類のLPL変異が集積されている。15種類中、5種類のLPL変異、Tyr-61-Stop(438のT→A)、Asp-204-Glu(867のC→G)、Ala-221-del(916のG→deletion)、Ala-261-Thr(1036のG→A)、Trp-382-Stop(1401のG→A)の正常/変異のヘテロおよび変異/変異のホモを確実に検出できるInvader測定系の確立に成功している。
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