研究概要 |
BALB/c系雄マウスを2から120日間単独隔離ストレスを負荷し、生じる変化を解析した。(1)体重は急性期に対照に比較して有意に低下し、その後回復したが、120日目から再び低下に転じた。血清中のコーチゾン量は急性期に上昇し、その後正常値にもどった。血清中のセロトニン量には変動はみられなかった。(2)脾臓と腸管膜リンパ節細胞を比較した所、脾臓細胞のConAに対する増殖性は急性期に低下したが、慢性期に回復した。一方腸管膜リンパ節細胞のConA反応は急性期に増強されたが,慢性期に完全に抑制された。脾臓細胞のT/B比は急性期に減少し、慢性期に正常レベルに回復した。一方、腸管膜リンパ節細胞のT/B比は急性期に上昇したのに対し、慢性期に低下した。脾臓細胞のCD4/CD8比は急性期に上昇し、慢性期に正常レベルに回復した。腸管膜リンパ節細胞のCD4/CD8比も急性期に上昇し、慢性期に低下した。脾臓細胞のConA刺激によるIL-2産生量は変化しなかったが、腸管膜リンパ節細胞のIL-2産生は急性期に上昇し、慢性期には抑制された。脾臓細胞のIL-4産生は変化しなかったが、腸間膜リンパ節のIL-4産生は慢性期に顕著に上昇した。(3)大腸のmRNA発現を調べた所、急性期にガン原性遺伝子c-fosやc-mycの発現が上昇していた。以上、単独隔離ストレス負荷によって、腸管膜リンパ節細胞と脾臓細胞は相反する免疫的影響を受けている可能性が示された。急性期の変化にはコーチゾンが関与している可能性が考えられるが、慢性期には他の神経伝達物質の関与が示唆された。また、大腸がストレス負荷により影響を受けていることが、遺伝子レベルで明らかとなった。
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