ストレスの大腸に及ぼす影響を検討する目的でDNAアレイを用いた遺伝子発現解析を行った。マウスに長期間単独隔離ストレスを負荷し、経時的に大腸を切除し、RNAを抽出後、^<32>P-dATPを用いてcDNAに逆転写した。メンブランタイプのDNAアレイにハイブリダイズさせ、洗浄後、X線フィルムに感光させ、スキャナーで取りこんだ画像から遺伝子の発現強度を測定した。K-means法で各遺伝子の経時変化をクラスターに分けると、大多数の遺伝子は変化しないが、2日目(急性期)、30日(慢性期)および60日目に発現増加する遺伝子が分類、同定できた。 個別的にみると対照に比べて隔離2、30および60日の大腸サンプルでは、1176個の遺伝子のうち、発現が2倍以上(増加)となった遺伝子数はそれぞれ147、178および119個であった。発現比が0.5以下(減少)となった遺伝子は126、179および148個となった。また、有意に発現変化した遺伝子の数はそれぞれ100、119および62個となった。すなわち、慢性期が最も発現変化が顕著であった。サイトカイン・ホルモン、神経伝達物質およびそれらの受容体の遺伝子発現に注目するとIL-12の発現が低下し、IL-10およびその受容体の発現が増加していることから、ストレスにより生体がTh2型に傾いている可能性がみられ右ホルモン・神経伝達物質およびそれらの受容体遺伝子では、2日および30日隔離での多数の上昇が観察された。以上の結果、単独隔離ストレスで大腸が強い影響を受け神経過敏となっている可能性が示され、この系がストレス研究の有用なモデルとなることがわかった。
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