大腸ガン、炎症性腸疾患(IBD)や過敏性腸症候群など腸の疾患の発症や悪化にストレスが深く関わっていると云われているがその機構はよくわかっていない。そこで、ハプテンを用いて潰瘍性大腸炎のモデルマウスを作成し、DNAアレイを用いて、炎症がどのように修飾されるか、疾患関連遺伝子の同定めざした。 トリニトロクロルベンゼンスルフォン酸(TNBS)の浣腸で潰瘍性大腸炎を誘導したマウス、あるいは30日間の単独隔離ストレス負荷後にTNBSで潰瘍性大腸炎を誘導したマウスから経時的に大腸を切除し、RNAを抽出し、ゲノミックDNAを除去後、^<32>P-dATPを用いてcDNAに逆転写させ、DNAアレイにハイブリダイズさせ、X線フィルムに感光させた後、スキャナーで取りこんだ画像を解読し、遺伝子(mRNA)の発現プロファイルを解析した。その結果、(1)TNBSで潰瘍性大腸炎を惹起したマウスの大腸で2倍以上発現上昇した遺伝子の数は131個で、ストレス負荷下に潰瘍性大腸炎を誘導した場合には135個であった。(2)スキャッタープロットで遺伝子発現強度を全体的にみると、ストレスを負荷下方が顕著に遺伝子発現が制御されて、スポットが広がっていた。(3)発現上昇した遺伝子を機能別に分けると、Extracellular cell signalling & communication関連の遺伝子がそれぞれ48と46個で顕著に多く、Th2型のサイトカインの産生が顕著であった。また、(4)TNBSのみではTranscription factor & DNA-binding proteins関連遺伝子が、ストレス負荷ではIon channels & transport proteins関連遺伝子が発現しており、ストレスにより遺伝子発現が修飾されることが明らかになった。(5)リアルタイムPCR装置を用いて、RT-PCRで各遺伝子の発現の確認も行った。
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