大腸ガン、炎症性腸疾患や過敏性腸症候群など腸の疾患の発症や悪化にストレスが深く関わっていると云われている。そこで、マウスに単独隔離ストレスを負荷し、腸管免疫系への影響を解析した。腸管膜リンパ節細胞のConA反応は急性期に増強され、慢性期に抑制された。T/B比は急性期に上昇したのに対し、慢性期に低下した。IL-4産生は慢性期に顕著に上昇し、Th2型有意の可能性を示した。このように腸間膜リンパ節細胞はストレスの影響を顕著に受けたが、脾臓と相反する傾向が見られた。コーチゾン量は急性期に、サブスタンスPが慢性期に上昇していた。 DNAアレイを用いた遺伝子発現解析で、ストレスの大腸に及ぼす影響を解析した。有意に発現上昇した遺伝子数は、慢性期が最も多かった。IL-12の発現が低下し、IL-10およびその受容体の発現が増加していることから、ストレスにより生体がTh2型に傾いている可能性がみられた。2日および30日隔離で多数のホルモン・神経伝達物質およびそれらの受容体遺伝子の発現上昇がみられた。以上の結果から、単独隔離ストレスで大腸が強い影響を受け神経過敏となっている可能性が考えられた。次に、トリニトロクロルベンゼンスルフォン酸(TNBS)の浣腸で潰瘍性大腸炎を誘導したマウス、あるいは30日間の単独隔離ストレス負荷後にTMBSで潰瘍性大腸炎を誘導したマウス大腸からRNAを抽出し、遺伝子発現解析を行った。その結果、TNBSのみではTranscription factor & DNA-binding proteins関連遺伝子が、ストレス負荷ではIon channels & transport proteins関連遺伝子が発現しており、ストレスで遺伝子発現が増大し、修飾されることが明らかになった。さらに、リアルタイムPCR装置でRT-PCRを行い、各遺伝子発現変化が確認された。
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