研究概要 |
1.パラコート中毒 パラコート中毒による膜脂質過酸化を調べるため、パラコート10mg/kgをラットの腹腔内に一回投与し、腎、肝、肺におけるコレステロール過酸化物(Ch-OOH)濃度の経時変化を調べた。7α-OOH、7β-OOHはパラコート投与前のラットの各組織から検出できた。パラコート投与2時間後において、腎では2倍、肝では1.5倍にCh-OOHが増加した。1日後、及び5日後においても腎では対照値の2倍に増加したままであった。肝では1日後に対照値に戻っていた。肺ではいずれの時間においても変化が見られなかった。 パラコート中毒では間質性肺炎の他に尿細管壊死等の腎障害も併発し、死に至る。今日の投与量はごく少量であるにもかかわらず、腎のCh-OOHが2倍に増加していたことは腎障害発現のトリガーとなることを示唆している。 2.アルコール性筋障害 アルコール長期摂取により筋障害が60%の高率で起こる。組織学的に分析すると、骨格筋Type II fiberの選択的萎縮が認められる。今回は、アルコール投与ラットにおいて骨格筋の脂質過酸化を指標として筋障害を調べた。ラットに75mmol/kgのアルコールを1回腹腔内投与し、24時間後にヒラメ筋(soleus,Type I fiber優位)と足底筋(plantaris,Type II fiber優位)を採取し、膜脂質のCh-OOHを定量した。コントロールラットにおいて、足底筋中の7α-OOH、7β-OOHはともにヒラメ筋中の7α-OOH、7β-OOHよりも有意に高かった。それは、ヒラメ筋(Type I fiber優位の骨格筋)では、catalse,glutathione peroxidase,SDO等の消去系酵素の活性値が足底筋(Type II fiber優位)よりも高いためである。アルコール投与24時間後に、ヒラメ筋、足底筋において、7α-OOH、7β-OOHはともに30-40%の上昇が見られ、アルコール1回投与によっても骨格筋の脂質過酸化の亢進が見られた。
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