研究概要 |
アセトアルデヒド(AcH)のエピネフリン(EP),ノルエピネフリン(NE)及びドーパミン(DA)等の脳内アミンに対する影響を検討した。ラットをシアナマイド(CY)で前処理後に,エタノール(EtOH)2g/kg又は4g/kgを投与して,60分後に脳を摘出し,小脳,延髄十橋,中脳,大脳皮質,視床及び視床下部の6つの部位に分けて採取し,脳内アミンの測定はカテコールアミン自動分析装置と今回申請した電気化学検出器クロケームを接続した高速液体クロマトグラムで行った。 血中AcH濃度は,CY前処理(以下CY+EtOH群)により濃度依存性に増加した。EtOHとCY単独投与では生食を投与したコントロール群とほぼ同様で,各部位とも脳内アミンには変化は認められなかった。脳内のEP濃度は血中AcHの上昇によっても有意な変動が認められなかった。これに対し,DA濃度はCY+EtOH群において,各部位で上昇傾向を示したが,視床では有意に低下した。一方,NE濃度はほとんどの部位において低下し,特に延髄十橋,視床,視床下部では著しく,コントロール群に比べ40〜50%の低下がみられた。この結果,AcHは脳内で特にNEに影響を及ぼし,EtOH摂取後にみられる酩酊症状(特にアルデヒド脱水素酵素の欠損者)に関与している可能性が示唆された。 今回の方法では,血中AcH濃度が高濃度になり,これらが循環系に影響して,これが脳内アミンの変動をもたらしている可能性もあり,これらを排除するため,マイクロダイアリーシス法により,特定部位をAcH又はEtOH溶液でかん流して脳内アミンの変動を検討する目的で,マイクロダイアリーシスの手法を会得するための予備実験を現在施行している。
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