本研究では主として補体C6とC7の遺伝子解析を行い、これらと並行して各国集団におけるC9欠損遺伝子分布を調べた。C6およびC7の各表現型を検査した試料について末梢血DNAを分離精製し、種々のプライマー・セットでPCRを行い、さらにダイレクト・シークェンシングでSNPsを検索した。結果と得られた知見は次の通りである。C6遺伝子について:(1)エクソン3の413番塩基にA→C置換がみられ、対応するアミノ酸がGluからAlaに変化し、AならばC6-Aのアロタイプと、CならばC6-BとC6-B2のアロタイプと関連する。(2)エクソン10の1674番塩基にT→C置換があるが、対応するアミノ酸(Cys)に変化はない。(3)エクソン13の2145番塩基にT→A置換があり、アミノ酸はAspからGluに変化している。(4)この部の塩基がT/A(ヘテロ)であるタイプが表現型C6-B(ホモ)の試料から検出され、Bのアロタイプに関連する遺伝子は2種類あると推定された。(5)イントロン2の357番の下流32番目塩基にG→A置換があり、日本人集団における遺伝子頻度は、^*G=0.920、^*A=0.080であった。(6)イントロン3の503番の上流78塩基にG→A置換がある。C7遺伝子について:(1)第13イントロンの10番目塩基にG→A置換が高頻度でみられ、Hin1I多型としてRFLPで解析できる。(2)第9エクソンの1166番塩基にG→C置換が高頻度でみられるが、アロタイプの関連はない。日本人集団における塩基の頻度はG : C≒1:1である。(3)C7遺伝子第4エクソンにはC7-5アロタイプと密接に関連する塩基変異が存在し、これはアジア人に特徴的遺伝子であることがわかった。C9遺伝子について、R95Xアリールは日本人、韓国人、タイ人の各集団に存在するが中国人集団には極低頻度であり、欧州白人からは検出されなかった。よってR95Xアリールもアジア人に特徴的遺伝子であると考えられた。
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