本研究では、ミニサテライトを利用した高確度親子鑑定法確立における突然変異の問題に研究の主眼点をおいているが、平成12年度では、そのための基本的技術と日本人におけるミニサテライトのアリル構造について研究をすすめた。まず、親子鑑定において、MS32を利用したMVR-PCR法を親子鑑定に利用した突然変異が起こった場合の偽排除との区別をデータベースのアリル情報からシュミレーションして検討した。また、あるマイクロサテライトに突然変異があった場合において、否定されていない高変異ミニサテライトのMVR-PCR法でマッピングされたアリル情報が、父権肯定にいかに貢献するかを実際の鑑定例において検討したところ、ミニサテライトはやはり高いPaternity Indexを示したので、父子鑑定の場合、突然変異の起こったローカスの結果を除外せず、父権肯定確率の計算で考慮して計算することを提案した。 さらに、MVR-PCR法はミニサテライトの高変異性を詳細に表す最適な方法であるが、より客観的にまた迅速にマッピングするため蛍光標識による自動分析法の試みをMS32において行った。今回の研究対象の中心となったミニサテライトB6.7は、最も高変異なミニサテライトのひとつであるが、日本人では全く分析されていない。このため、我々は血縁関係のない日本人96人について、まずMboI断片によるアリルの大きさを分析したところ、その多くは40-80リピートであり、Caucasianの分布に類似していたが、10リピート程度の短いものも割合数多くみられた。現在までの長さの違いによるヘテロ接合度は82%以上であり、B6.7は日本人においても膨大な多型性を示すため、その突然変異率の高さも示唆された。
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