アルコールは水と二酸化炭素に分解されるといわれているが、アルコールのかなりの部分が肝臓でアセトアルデヒドと酢酸までしか代謝されず、血中へ酢酸として再放出され、他の組織・臓器で処理されている。アセトアルデヒドと酢酸は毒性があり、それらの影響は重要と考えられる。アルコールの勲態だけでなく、アセトアルデヒドや酢酸の血中動態の把握を目指して研究を行ってきた。本研究では、アルコール代謝に影響を与えるフルクトースやグルコースの投与を使い、アルコール投与後のアセトアルデヒド及び酢酸代謝への影響を検討した。また、アルコールとアセトアルデヒドの薬物動態モデルを検討した。家兎にアルコールを急速静注し、購入したガスクロマトグラフとヘッドスペース・サンプラーを使って、アルコール・アセトアルデヒド・酢酸の同時測定を行った。その結果、フルクトースやグルコースはアルコール代謝の促進と同時に、アセトアルデヒド代謝や酢酸の消失をも促進することが明らかとなった。また、アセトアルデヒドは非線形動態に従う可能性が考えられた。そこで特に、アルコールとアセトアルデヒドの薬物動態モデルを検討した。血中アセトアルデヒド消失曲線を検討したところ、血中アルコール濃度と平衡関係にある部分と、アルコール代謝に関連して血中へ再分布する部分とからなっているものと考えられた。アルコール代謝に関連した部分の動態モデルとして、線型動態の1次消失速度過程と、非線形動態のミカエリス・メンテン型消失動態モデルと考案し、比較した。コンピューターを使い、非線形最小自乗法によりコンパートメント・モデル解析を行ったところ、ミカエリス・メンテン型消失モデルが最適であることが明らかとなった。今後、個体差・個体内差の影響を調べ、アルコールの代謝産物からの血中アルコール濃度推定の可能性を検討する予定である。
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