研究概要 |
一過性の脳虚血後に生じる神経細胞障害の程度に部位差,脆弱性が認められ,虚血時に側座核ドパミン(DA)及びセロトニン(5HT)の著名な増加を報告した.虚血再灌流に対して,両側座核DA,5HT系神経は抵抗性を有していることを報告した.今回,脳局所低酸素モデル(虚血モデル)として,シアン化ナトリウム(NaCN)誘発エネルギー産生不全による側座核DA,5HT系の放出変化とそれらの抵抗性について検討した.材料と方法:体重280-310gのWister系雄ラットを用いた.脳内微小透析膜ガイドカニュレを側座核に挿入固定した.4-7日後,以下の3群に分け,脳内微小透析膜プローブを挿入し,側座核DA,5HT放出変化を無拘束無麻酔下で検討した.(1)CN-CN群:側座核へプローブ挿入後,各モノアミン放出安定を確認した.実験開始直後の最初の20分間,2mM NaCN含有人工脊髄液(aCSF)で側座核を灌流刺激し,その後対照aCSFに戻した.実験開始1時間後再びNaCN灌流液で20分間刺激し対照灌流に戻した群,(2)CN-カリウム群:(1)同様,最初20分間2mM NaCN灌流液で側座核を刺激し,その後40mMカリウム含有灌流液で刺激した群.(3)コントロール群:実験2時間aCSFで灌流した群.側座核灌流液は電気化学検出器接続液体クロマトグラフィで測定した.結果:側座核DA放出変化:(1)において,NaCN灌流エネルギー産生不全に対し側座核DAは著名な放出増加を示し,2回目のCN灌流においても増加を示した.(2)におけるカリウム刺激により,側座核DA放出は増加しNaCNによるDA神経系放出機能に障害は認められなかった.側座核5HT放出変化:最初のNaCN灌流刺激において側座核5HT放出は増加した.しかし,(1)群の2回目のNaCN及び(2)群のカリウム刺激では側座核5HT放出は認められなかった.これらの結果により,NaCN灌流に対して側座核5HT神経系はDA神経系に比べて高い感受性を示した.脳虚血障害の部位脆弱性に加えて,各モノアミン神経系の抵抗性の相異が示唆された.
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