研究概要 |
実験モデルの作成にあたり,侵襲形態として切創・熱傷・電撃等について検討を行い,侵襲量定量化が容易であること等から,マウス切創モデルを採用することとした。なお,後二者については,表皮細胞核の形態的変化のメカニズムについて検討し,核伸張現象の原因が真皮膨張による圧迫機転によるものと考えられることを示した。 5週齢のDDY雄性マウスにペントバルビタールで腹腔内麻酔後,背部に長さ2cmの皮膚全層にわたる切創を作成し,30分〜240時間後にマウスを屠殺し,皮膚を採取した。これを試料として,血管増殖に関わるサイトカインとされているbasic fibroblast growth factor(bFGF)およびvascular endothelial growth factor(VEGF)の発現動態を免疫組織化学的に検討した。その結果,損傷組織においてはbFGFは8〜144時間後の線維芽細胞と72,144時間後の表皮細胞において発現が認められ,VEGFは72,144時間後の表皮細胞において陽性であった。これらの染色像は死後変化に対して比較的耐性があり,また死後損傷によっては発現されないことが確認された。さらに炎症細胞浸潤とほぼ同時に皮膚での発現が増強しており,その関連が示唆された。 bFGFとVEGFとを比較した場合,前者は表皮細胞のみならず線維芽細胞でも発現が確認できること,早期にタンパク発現を認めることなどから,受傷後経過時間推定にとってより有用なマーカーであることが示唆された。そこで,今後bFGF遺伝子発現につきin situ hybridization法,およびRT-PCR法を用いて検討を行うこととし,これに着手した。
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