研究概要 |
顕微鏡のプレパラートのようなガラス基板(マイクロチップ)内の微小空間に反応固相を導入することにより,反応効率及び反応速度の向上が見込めると考え,独自の集積化免疫分析システムの開発を試みた.これまでにチップ内に導入したビーズ上で抗原抗体反応を行うと反応速度が向上し,わずか10分程度で完了することを見いだし,大幅な分析時間の短縮が可能であることを報告した(Anal Chem, 72, 1144, 2000).さらにマイクロチップ技術の利点として比較的容易にアレイ化,マルチチャネル化が可能であるため,マルチチャネルチップを開発し,これを用いたサンドイッチイムノアッセイにより,血清中に含まれる腫瘍マーカーCEAの多検体同時定量を実現した(Anal Chem, 72, 1213, 2001).今年度はこれらの知見をもとに多種類の薬物の同時定量を実現するためのシステムを考案し,分析に必要な反応について検討を行い,その性能を評価することを目的とした.競合イムノアッセイでメタンフェタミン(MA)とフェノバルビタール(PB)の測定をおこなった.標識剤には金コロイドを使い,高感度な分析法である熱レンズ顕微鏡で検出した.PBでは0.1ng/mL、MAでは0.1pg/mL程度まで定量可能であり,従来法に比べ3桁以上高感度であり,充分に実用可能であることが示された。現在多くの薬剤のマルチチャネルチップによる同時分析について検討している.本システムは用いる抗体を変えることにより様々な応用が可能であると考えられ,薬剤だけでなく環境分析など幅広い分野への応用が期待できる.
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