研究概要 |
マイクロチップと呼ばれる微小空間内で抗原抗体反応を行う独自の集積化免疫分析システムの開発を試みてきた.チップを用いると大幅に分析時間が短縮されたので,さらにマイクロチップ技術の利点であるマルチチャネル化をし,多種類の薬物の同時定量の方法を開発した. ガラス製基板中にマイクロチャネル(幅200,深さ100,中央部分の深さ10ミクロン)を作り,反応固相として直径約50ミクロンのポリスチレンビーズを導入した.複数のビーズ固定部位に種類の違う抗体ビーズを堰き止め,チャネルの上流から複数薬剤の混合溶液を,シリンジポンプを用いて流した.平成14年度の研究では1本のチャネルに複数の堰き止めをもつシリアルマルチチャネルを使った.ビーズをせきとめるためにはレーザーとFABを組み合わせたこれまでの多段階の作製法から等方エッチングにより1度にせき止めダムとチャネルを作る方法を開発した.アミカシン,トブラマイシンなどの抗生剤の他,メタンフェタミン,フェノバルビタールに対する抗体を使い,それぞれの薬剤にBSAを結合させビオチン化した物質との競合反応を行った.さらに金コロイド標識ストレプトアビジンを反応させ,熱レンズ顕微鏡で測定した. アミカシン(0.1pg/mL),トブラマイシン(100pg/mL),フェノバルビタール(100pg/mL),メタンフェタミン(0.1pg/mL)が定量でき,高感度で分析時間が短く充分に実用可能であることが示された.一つのサンプルに含まれる複数種類の成分の分析を行う場合,分岐構造を持ったパラレルなマルチチャネルではサンプルが複数の流路に等しく分岐して流れる必要がある.さもないと反応部位を通過する試料量が大きく変わるので誤差の原因になる.シリアルの場合は,サンプルは分岐せずに全量がすべての反応部位を通解することになり,分岐によるばらつきを押さえるのに有効であると思われる.
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