研究概要 |
イムノアッセイは抗原抗体反応を利用したあらゆる分身で不可欠の分析法である.本研究ではマイクロチップと呼ばれる微小空間内で抗原抗体反応を行う独自の集積化免疫分析システムの開発を試みてきた.マイクロチップを用いると従来のイムノアッセイに比べて大幅に分析時間が短縮されたので,さらにマイクロチップ技術の利点であるマルチチャネル化をし,多種類の物質の同時定量の方法を開発した.ガラス製基板中にマイクロチャネル(幅200,深さ100,中央部分の深さ10ミクロン)を作り,反応固相として直径約50ミクロンのポリスチレンビーズを導入した.複数のビーズ固定部位に種類の違う抗体ビーズを堰き止め,チャネルの上流から検体を,シリンジボンプを用いて流した.1本のチャネルに複数の堰き止めをもつシリアルマルチチャネルを使った.ビーズをせきとめるためにはレーザー加工及び高速原子衝突にを組み合わせた多段階の作製法から等方エッチングにより1度にせき止めダムとチャネルを作る方法を開発した.サンプルは分岐せずに全量がすべての反応部位を通解することになり,分岐によるばらつきを押さえるのに有効であった.アミカシン,トブラマイシンなどの抗生剤の他,メタンフェタミン,フェノバルビタールに対する抗体を使い,それぞれの薬剤にBSAを結合させビオチン化した物質との競合反応を行った.さらに金コロイド標織ストレプトアビジンを反応させ,熱レンズ顕微鏡で測定した.アミカシン(0.1pg/mL),トブラマイシン(100pg/mL),フェノバルビタール(100pg/mL),メタンフェタミン(0.1pg/mL)が定量でき,高感度で分析時間が短く充分に実用可能であることが示された.さらに標識剤は金コロイドのみでなく,酵素と基質を使った発色物質にも応用でき,ハイスループットなマイクロELISAシステムの開発へと進めた.薬剤だけでなく,サイトカイン,癌マーカーやBNPなどの心疾患の指標となる物質の定量が迅速,簡便,極微量で可能になった.
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