研究概要 |
ICRマウスを用いたアコニチン(ACO)とテトロドトキシン(TTX)のの体内動態に関する相互作用について検討した.マウスにACOとTTXをさまざまな濃度で投与し心腔内採血した血液より血清を分離し4μmのメンブランフィルタでろ過したものを,カラムスイッチングLC/MSにて測定した.カラムはACO分析:Zorbax XDB C_<18>,前処理:MSpak PK-4A, TTX分析:NN-414,前処理:MSpak CX-402を用いた分析条件は平成12・13年度に本研究にて確立したものである. 1.ACO単独投与(0.3mg/kg)の死亡率は25.0%(N=80),死亡例の平均生存時間(ST,分)は22.6,TTX単独投与(10μg/kg)の死亡率は13.7%(N=51),STは28.3,併用投与では[ACO 0.2mg/kg, TTX 10μg/kg]群の死亡率は100%(N=15),STは4.06[ACO 0.3mg/kg, TTX 10μg/kg]群の死亡率は92.0%(N=24),STは5.63,[ACO 0.3mg/kg, TTX 15μg/kg]群の死亡率は77.3%(N=75),STは7.87であった.単独投与より併用投与で死亡率が高く,STも短かった.併用投与ではACO投与量が少ないもので死亡率が高く,STも短かった.TTX投与量が多いものでは死亡率が低く,STも長かった.LD_<50>以下のACOとTTX併用投与における毒性はこれら相加ないしは相乗効果の影響を複雑に受けていることが示唆された. 2.ACO単独投与(0.3mg/kg)では,血清中ACO濃度(ng/ml)は投与後5分で7.17,15分で20.32,30分で9.49,60分で6.87,90分で8.82,ACO代謝物のベンゾイルアコニン(BAN)濃度(ng/ml)は5分で1.12,15分で1.37,30分で1.16,60分で0.65,90分で1.03であった.TTX単独投与(10μg/kg)では,血清中TTX濃度(ng/ml)は投与後5分で0.9,15分で0.8,30分で2.4,45分で1.4,60分で0.7であった.これに対し,ACO・TTX併用投与(ACO 0.3mg/kg, TTX 15μg/kg)では,血清中ACO濃度(ng/ml)は投与後5分で4.15,15分で5.41,30分で0.59,60分で1.09,90分で0.63,BAN濃度(ng/ml)は5分で5.70,15分で7.41,30分で0.51,60分で1.42,90分で0.50であった.以上よりACO・TTX併用投与ではACO単独投与に比べACO濃度が低く,BAN濃度が高かったことから,TTXの影響下でACO代謝に何らかの変化が生じていることが判明した.この原因としてACOからBANへの加水分解反応の促進,あるいはBANからアコニンへの代謝の阻害,ACOの体外排泄の促進等が考えられた.
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