「エタノールによるミトコンドリアの融合・巨大化は、呼吸能の低下を代償する機構である」という仮説のもとに、その融合・巨大化のメカニズムの解明を目的とする。 本年度は手技の確立が目標であったが、エタノールの影響の成果もあったので報告する。 生きた細胞のミトコンドリアを特異的に染色する蛍光色素として、今年度は、Mito Tracker【○!R】 Green FM(MTG;蛍光強度はミトコンドリアの大きさに比例すると言われる)とJC-1(蛍光強度はミトコンドリアの膜電位(Δφm)に依存)を用いた。 1.【生きた細胞のミトコンドリアの蛍光顕微鏡による観察】 (1)MTGまたはJC-1を含む培養液中で培養心筋細胞を37℃、20分間培養し、ミトコンドリアを生体蛍光染色した。ミトコンドリアの落射蛍光倒立顕微鏡像をCCDカメラを通してARGUS-20(画像処理装置)で画像強調処理し、デジタル画像をパソコンに記録した。今年度購入したシャッター切替え装置のシャッターをARGUS-20からの信号でトリガーして開け、画像を取込む期間のみ細胞に励起蛍光が当たるようにして蛍光色素の褪色を防ぎ、経時的に連続観察できるようにセットアップできた。 2.【電顕で観察されたミトコンドリアの巨大化のflow cytometryによる数値化】 (2)心筋細胞を200mMエタノールに24時間曝露後、蛍光色素で生体染色してflow cytometryで測定したところ、MTGの緑色の蛍光強度が増大し、JC-1の赤色と緑色の蛍光強度、特に赤色が増大したので、エタノールによりミトコンドリアの量が増えるとともに、Δφmが過分極したと考えられた。 (3)心筋細胞をNagarseを用いてホモゲナイズして、ミトコンドリアを分画することに成功した。MTGで染色しflow cytometryで測定したところ、200mMエタノールの24時間曝露により、粒子内の複雑さの指標であるSSCに変化はなかったが、緑色の蛍光強度のピークが大きい方ヘシフトしたので、エタノールにより個々のミトコンドリアが大きくなったことを、flow cytometryでも確認できた。
|