研究概要 |
アレルギー炎症や寄生虫感染において中心的役割を果たす好酸球の分化様式の詳細は不明である。申請者らは好酸球に特異的に発現するヒトIL-5Rα遺伝子のプロモーター活性を担う重要なエンハンサー領域に、転写因子であるRFX1,RFX2,RFX3が二量体を形成して結合することを見い出した。また、IL-5Rαプロモーターの活性に重要なもう一つのエレメントにはC/EBPファミリー転写因子が結合することが他のグループから報告されている。本研究では、転写因子C/EBPとRFXの好酸球分化における役割について解析を行った。まず、すべてのC/EBPファミリーのDNA結合能を阻害しうるドミナントネガティブ型C/EBP(4hepC/EBP)を用いてC/EBPファミリーの骨髄球分化への関与を解析した。臍帯血CD34陽性細胞にレトロウイルスを用いて4hepC/EBPを導入しin vitroの培養系を用いて検討したところ、骨髄球特異的なサイトカイン(IL-5、G-CSF、M-CSF)に対する細胞の反応性が失われ、好酸球を含めた顆粒球と単球・マクロファージへの分化が著しく阻害された。以上の所見はC/EBPファミリーの機能が好酸球を含めた顆粒球分化のみならず、単球・マクロファージの分化誘導にも必須であることを示している。一方、RFXの機能を解析するために、申請者らはRFX1のDNA結合ドメインとengrailedの転写抑制ドメインのキメラ蛋白を作成し、このキメラ蛋白がRFXの認識する塩基配列に結合しドミナントネガティブ型として有効に機能することを確認した。RFX1,RFX2,RFX3はホモあるいはへテロ二量体を形成して同一の塩基配列に結合するが、このキメラ蛋白の利点はRFX1,RFX2,RFX3の機能を同時に阻害することができることにある。またRFX1のDNA結合ドメインとVP16の転写活性化ドメインのキメラ蛋白も作成し、このキメラ遺伝子が恒常的活性型RFXとして機能することも確認した。これらのキメラ遺伝子を上述のレトロウイルスの系を用いて血液前駆細胞に導入し、in vitroの培養系においてIL-5Rαの発現が抑制されて好酸球の産生がおさえられるかどうかを検討する予定である。
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