本研究の目的は平成12年度から平成13年度の間に、自己免疫疾患の病因や病態形成におけるヒト内在性レトロウイルスの関与を検討することである。自己免疫疾患における内在性レトロウイルスの関与を検討するために、平成12年度では、まず多発性硬化症、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデスをはじめとする自己免疫疾患を対象に臨床検体を採取し、患者血清の保存と患者血漿からのRNA抽出を行った。一方、最近明らかにされたヒトゲノム全体のドラフトシークエンスから、内在性レトロウイルスのシークエンスと相同性のあるシークエンスを、BLASTサーチすることで得られるシークエンスをもとに、RT-PCRのためのプライマーを作成している。そして患者血漿由来のRNAからRT-PCRを順次施行し、多発性硬化症や慢性関節リウマチなどに特徴的な増幅がRT-PCRで認められるか否かを検討中である。また得られたRT-PCR産物を直接あるいはベクターにサブクローニングした後に、その塩基配列を決定し、内在性レトロウイルスのシークエンスに遺伝的多型性が存在するか否かの検討も進めている。これらのシークエンスの検討と並行して、逆転写酵素測定系の予備実験も進めている。今後、陽性の結果が得られた場合には、そのリコンビナント抗原を作成し、血清学的検査方法を作成することは可能と思われるので、当初の平成13年度の実験計画に大きな変更点はないと考えられる。
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