ゲノム上に散在する内在性レトロウイルス(HERV)は、遺伝マーカーとしての有用性のみならず、免疫複合体形成やプロモーター活性による周辺遺伝子の活性化により、自己免疫病の病因・病態に関与する可能性がある。一方、CpG島におけるシトシン残基の脱メチル化は遺伝子の転写活性と関連することが知られており、脱メチル化されたHERV領域は生体内で転写されている可能性がある。本研究では、自己免疫病に関連した新規HERVの同定を目指して、HERV周辺ゲノムのメチル化パターンのSuppression PCR法による解析を行った。方法はメチル化感受性酵素HpaIIで完全消化したDNA断片にアダプターを付与し、アダプター内のプライマーとHERVに普遍的な蛍光標識プライマー(U5、U3領域)を用いてsuppression PCRを行い、HERVを含むHpaIIフラグメントの増幅を行った。比較のため、同一の塩基配列を認識するメチル化非感受性酵素MspIのフラグメントも増幅し、フラグメント長を自動シークエンサーで展開し、Gene scanで解析した。結果、異なる症例の好中球とリンパ節組織のパターンを比較したところ、MspIフラグメントはほぼ同一であり、症例間でMspI/HpaIIによる遺伝多型は検出されなかった。一方、HpaIIフラグメントのパターンは両者で異なっており、ゲノムDNAのメチル化(Epigenetic factor)の相違を反映するものと考えられた。また、慢性関節リウマチの治療前後や、末梢血と関節液中の好中球でもHpaIIフラグメントのパターンに相違が認められた。Suppression PCRは簡便であり、今後、多くの自己免疫疾患症例を対象にしたHERV周辺ゲノムDNAメチル化パターンの検出に有用であると考えられる。
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