研究概要 |
自已免疫性血管炎と考えられている顕微鏡的動脈周囲炎、その腎病変である半月体形成性腎炎では、T細胞、マクロファージが主に組織に浸潤している。特に半月体形成、間質細胞浸潤の程度に相関して患者尿に同じ形質を持つ細胞が出現することを証明した。このうちT細胞はいわゆるmemory/effector型であり、サイトカインとしては主にIFN-γ,IL-2を発現し、IL-4の発現は検出できず、Th-1型あるいはTc-1型であることが解った。以上の結果は、現在発表論文を投稿中である。さらにこれらのT細胞抗原レセプターを解析し、疾患特異的T細胞の同定、NKT細胞の関与について検討を進めている。また、IFN-γの細胞性免疫を介した組織障害性に着目し、腎レジデント細胞であるメサンギウム細胞での細胞内情報伝達分子の活性化を検討した。IFN-γの主要な免疫作用であるMHC class II分子の発現に、細胞内情報伝達・転写因子STAT-1が関与し、そのnatural mutantの細胞内過剰発現が情報伝達系を抑制して、その作用を低下させることを論文発表した。さらに血管炎の患者群の一部で、リンパ球にmutant STAT-1が優位に発現していることを見いだし、現在病態との関連性を調べている。一方、腎血管炎の進行型では間質尿細管炎、尿細管障害を認めるが、その障害・回復過程でOsteopontinとそのレセプターCD44の発現と病態への関与を検討し、発表論文の掲載が予定されている。また、慢性糸球体腎炎のうち最も頻度の高いIgA腎症による腎糸球体血管炎の発症機序について、扁桃での局所免疫の関与を報告してきた。扁桃Tリンパ球が構成的にIFN-γを産生し、注目しているHemophilus Parainfluenzae菌体成分の特異抗原刺激によりIL-10、TGF-βの産生が亢進することを発表し、現在、腎組織に出現するT細胞との関連について検討している。そして、Fcレセプター、TGF-β、MCP-1、レニン・アンギオテンシン系など多角的に、それらの遺伝子多型とIgA腎症の発症進展との関連について検討を行った。
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