自己免疫性血管炎の発症機序の解明

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12670420
• 研究機関: 新潟大学
• 研究代表者: 下条 文武 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (20126410)
• 研究分担者: 坂爪 実 新潟大学, 医学部・附属病院, 助手 (70334662) ; 成田 一衛 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 講師 (20272817)
• キーワード: 自己免疫性血管炎 / サイトカイン / T細胞 / 細胞内情報伝達 / STAT-1 / 半月体形成性腎炎 / IgA腎症 / オステオポンチン

研究概要

自己免疫性血管炎と考えられている顕微鏡的動脈周囲炎、その腎病変である半月体形成性腎炎と、IgAが糸球体毛細血管に沈着して血管炎を惹起するIgA腎症の活動性の高い予後不良群では、T細胞・マクロファージが主に腎組織に浸潤している。細胞性半月体形成、間質細胞浸潤の程度に相関して、患者尿に同じ形質を持つT細胞が出現することを証明した。このうちT細胞はいわゆるeffector型であり、サイトカインとしてはIFN-γ,IL-2を発現し、IL-4は発現せず、Th-1型あるいはTc-1型であることが解った。またこの尿T細胞の同定は診断的価値も大きく、疾患活動性を示すことも解った。また、IFN-γの細胞性免疫を介した組織障害性に着目し、糸球体毛細血管細胞であるメサンギウム細胞での細胞内情報伝達分子の活性化を検討した。IFN-γの主要な免疫作用であるMHCclassII分子の発現に、細胞内情報伝達・転写因子STAT-1が関与し、そのnatural mutantの細胞内過剰発現により情報伝達が抑制でき、抗炎症治療のターゲット分子となりうることが解った。一方、腎血管炎の進行型では尿細管障害を認めるが、OsteopontinとそのレセプターCD44の尿細管障害回復過程への関与を解明した。また、IgA腎症による腎糸球体血管炎の発症機序について、扁桃Tリンパ球が構成的にIFN-γを産生し、注目しているHemophilus Parainfluenzae菌体成分の特異抗原刺激によりIL-10、TGF-βの産生が充進することを見いだした。そして、IgA腎症発症に関与するとされるIgA-Fcレセプター、Uteroglobinの遺伝子多型とIgA腎症の予後に関連が認められることを報告した。

研究成果

• [文献書誌] Minoru Sakatsume: "Human glomerulonephritis accompanied by active cellular infiltrates show effector T cells in urine"Journal of the American Society of Nephrology. 12. 2636-2644 (2001)
• [文献書誌] Minoru Sakatsume: "Down-regulation of interferon-γ signaling by gene transfer of Stat1 mutant in mesangial cells"Kindney International. 57. 455-463 (2000)
• [文献書誌] Yuansheng Xie: "Expression, roles, receptors, and regulation of osteopontin in the kidney"Kidney International. 60. 1645-1657 (2001)
• [文献書誌] Ichiei Narita: "Role of uteroglobin G38A polymorphism in progression of IgA nephropathy in Japanese patients"Kidney International. (in press).
• [文献書誌] Ichiei Narita: "Genetic polymorphisms in the promoter and 5' UTR region of the Fc alpha receptor (CD89) are not associated with a risk of IgA nephropathy"Journal of Human Genetics. 44. 694-698 (2001)
• [文献書誌] Satoru Suzuki: "Synthesis of immunoglobulins against Haemophilus parainfluenzae by tonsillar lymphocytes from patients with IgA nephropathy"Nephrology Dialysis Transplantation. 15. 619-624 (2000)