研究課題/領域番号 |
12670427
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中野 修治 九州大学, 医学部・附属病院, 講師 (40164248)
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研究分担者 |
三ツ木 健二 九州大学, 医学部・附属病院, 助手 (20315063)
中村 稔 九州大学, 医学部・附属病院, 助手 (40217906)
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キーワード | チロシンキナーゼ / シグナル伝達 / 抗がん剤耐性 / 浸潤能 / rac / rho / 足場依存性喪失 / Srcがん遺伝子 |
研究概要 |
癌細胞の浸潤能と薬剤耐性におけるチロシンキナーゼシグナル伝達の役割を、v-src導入ヒト上皮細胞HAG-1で解析した。HAG-1はv-srcを導入すると造腫瘍能と浸潤能をを獲得するが、アデノウイルス組み込み変異抑制Ras分子により内因性Ras機能を抑制すると造腫瘍能が完全に阻害され、さらにRas下流で細胞の遊走能に関与する低分子GTP結合蛋白RacとRhoの変異抑制分子は、Srcによる浸潤能や造腫瘍能を完全に抑制した。このためSrcによる癌悪性化や浸潤能の獲得には少なくともRas機能は必要であり、その下流のRac/Rhoが重要な働きをしていることが明らかとなった。Src下流のphosphatidylinositol-3kinase阻害剤やPKC阻害剤では浸潤能は抑制されないため、Srcチロシンキナーゼによるに浸潤能は、これらのシグナルと異なった経路で活性化され、Racを含む低分子GTP蛋白が癌浸潤の重要な分子標的となることがわかった。 またSrcをヒトHAG-1細胞に導入すると、5-FU、VP-16、アドリアマイシンなどの薬剤感受性には変化を与えないが、CDDPに対しては耐性を誘導した。アルカリエルーション法にてプラチナ-DNA架橋鎖を測定すると、SrcチロシンキナーゼはDNA架橋鎖修復を亢進させることがわかった。さらに活性型Srcはチュブリンの脱重合を阻害するタキソテールの薬剤感受性を上げることを発見し、この機序はSrcが抗アポトーシス作用のあるBcl-2をリン酸化することによりその機能を抑制するためであることが明らかになった。
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