研究概要 |
結核に代表される細胞内寄生性病原体の感染防御における1型サイトカイン関連分子の重要性を示す近年の数ある報告を受け、我々はインターロイキン12レセプター(IL-12R)の遺伝子多型解析を行った。β1鎖の細胞外部分に合計4カ所の一塩基多型(SNP)を認め、その内3カ所にアミノ酸置換を認めた(Q214R, M375T, G378R)。4カ所のSNPには完全な連鎖不平衡の関係が認められ、Q214-M375-G378(wild型;WT)およびR214-T375-R378(mutant型;mt)の2種類のβ1遺伝子の存在を同定した。β2鎖には明らかな多型は認められなかった。これらの結果をもとに結核患者を用いて患者対照関連解析を行ったところ、β1多型アリルのヘテロ群(WT/mt)でオッズ比1.51(P=0.14)、ホモ群(mt/mt)では2.30(P=0.017)とカイ二乗検定にて有意差を認めるに至り、遺伝学的にβ1遺伝子多型が、結核の疾患感受性に寄与する遺伝子の一つであることが示唆された。さらにWT/WT型、mt/mt型それぞれのβ1遺伝子型をもつ健常者末梢血のCD2陽性細胞機能解析を行った。増殖アッセイ、IFN-γ誘導アッセイ等の解析により、mt型でのIL-12に対する反応性の低下が示され、IL-12/IFN-γ経路への生物機能的な関与が示唆された。以上の結果より、IL-12Rβ1遺伝子多型が、1型サイトカイン活性化経路に部分的な機能障害を引き起こし、一般集団における結核菌への選択的易感染性に寄与している可能性が示された。(Akahoshi M et al.論文投稿中) IFN-γ受容体1では、Val14Metを見出し,この多型を有するBリンパ球のHFN-γ刺激によるHLA-DR発現率は正常受容体を有するBリンパ球よりも有意に低く、Vall4Met多型は、受容体機能低下を導くことが示唆された。またIFN-γ受容体2においても、Gln64Argのアミノ酸多型が存在しており、これらの2種類の多型の組み合わせは、Th1/Th2免疫反応に関わり、Th1反応の低下を招く因子となりうることを示した。またリガンドであるIFN-γ遺伝子のマイクロサテライト多型を解析すると、14回CA繰り返しをホモで有する個人は、リンパ球刺激によるIFN-γ産生が有意に低いことを明らかにした。(Miyake K et al. in press)一方Th2サイトカインの代表的なIL-4遺伝子の多型を解析すると日本人には2種類の対立遺伝子しか存在せず、この比率は、コーカサス民族とは大きくかけ離れていることが明らかとなった。さらにこの2種類の対立遺伝子には、大きな機能的相違があり、日本人ではIL-4産生が高いハプロタイプが有意に多いことも明らかとなった。。(Nakashima H et al. in press)以上のような結果よりサイトカイン関連遺伝子の遺伝子多型によりTh1/Th2反応が影響を受ける可能性が示唆された
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