TNF-αは慢性関節リウマチ(RA)をはじめとした自己免疫疾患の発症に重要な役割を果たしていることが知られており、従来可溶型TNF-αがその働きの中心を担っていると考えられてきた。可溶型TNF-αは、その前駆体として細胞膜表面にとどまった形の膜型TNF-αとして表出したのち、メタロプロテイナーゼで切断をうけて可溶型として放出される。膜型TNF-αの生理学的機能はほとんど不明であったが、近年その受容体がtype 2 TNF受容体であることが明らかにされ(Cell 1995)、膜型TNF-αの機能が注目されている。われわれは活性化T細胞上に発現している膜型TNF-αが、細胞と細胞の接着を介して標的細胞に作用することにより、可溶型TNF-αと全く異なる様々な免疫応答を惹起することを見いだした。すなわち、T細胞上の膜型TNF-αはautoのB細胞にはたらいて抗体産生を惹起し、また一方では抗TNF-αによりT細胞自身が活性化され、種々のサイトカインが誘導される。今回いただいた助成金を用いて我々はT細胞の表面上に存在する膜型TNF-αの刺激に伴って、T細胞に誘導される生物学的機能についてさらに解析を進め、Eセレクチンが誘導されること、Eセレクチンの誘導には膜型TNF-αの細胞内ドメインの3つのセリン残基は必要ではないことを明らかにした。さらに機能発現に必須の細胞内シグナル伝達経路ならびにシグナル伝達に関与する分子の同定をYeast two-hybrid systemを用いて行った。我々の研究は従来のサイトカインの生理作用が可溶型のみを介するという概念とは全く異なり、細胞膜にとどまった形(膜型)のサイトカインの新しい機能に着目したものであり独創的である。膜型TNF-αは細胞表面機能分子として特に炎症局所での免疫応答をつかさどると考えられ、われわれの研究は新しい視点からの自己免疫疾患の病態解明と治療戦略の構築を可能にすると考える。
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