研究概要 |
我々はこれまで、全身性エリテマトーデス(SLE)患者末梢血T細胞ではTCRζ鎖(ζ)タンパクの発現が低下する原因が562bp短いalternatively splicing form 3'UTRをもつζmRNA(ζmRNA/as-3'UTR)の発現亢進と、wild form 3'UTRをもつζmRNA(ζmRNA/w-3'UTR)の発現低下にあることを報告してきた。本年度は、このようなζ鎖mRNA3'UTR異常によってζ鎖タンパク発現低下が引き起こされるかどうかをpDON-AIを用いたin vitroの系で確認した。まず始めにζcDNA/w-3'UTRとζcDNA/as-3'UTRとをRT-PCRで増幅しpDON-AI vectorに組み込んだ。次に、このrecombinant vectorをPT67細胞にtransfectさせ、その上清を回収しMA5.8細胞(マウスハイブリドーマ細胞2B4.11由来の細胞で、ζ鎖発現が欠損したもの)に加え(なにも加えていないMA5.8,insert DNAをもたないpDON-AIを加えたMA5.8,pDON-AI/ζcDNA/w-3'UTRを加えたMA5.8,pDON-AI/ζcDNA/as-3'UTRを加えたMA5.8をそれぞれMA5.8,NEG, WT3'UTR, AS3'UTRとした)、MA5.8 mutantを作製した。FACSならびにビオチン標識した細胞表面分子を抗原とした免疫沈降法で検討してみると、WT3'UTRの細胞表面上にはζ鎖のみならず他のTCR/CD3複合体構成成分(TCRα/β, CD3γ, CD3δ, CD3ε)も発現されていたが、AS3'UTRではintrinsic CD3ε以外はTCR/CD3複合体構成成分だけでなくζ鎖発現も認められなかった。以上のことから、短い3'UTRをもったζmRNAからは細胞表面上のζ鎖のみならずTCR/CD3複合体自体も発現されない可能性がin vtiroで示唆された。このようなMA5.8 mutantのTCRを介するシグナル伝達を検討してみると、抗CD3抗体で刺激後、WT3'UTRではIL2産生が著明に亢進したが、AS3'UTRのIL-2産生レベルはMA5.8やNEGと同程度で、AS3'UTRでは細胞表面上にζ鎖がないために抗CD3抗体で刺激してもTCRからの刺激が細胞内に伝達されないことが考えられた
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