研究概要 |
【目的】これまでにカルパイン(カルシウム依存性システインプロテアーゼ)の特異的阻害蛋白であるカルパスタチン(calpastatin : CS)に対する自己抗体が関節リウマチ(RA)をはじめとするリウマチ疾患に検出されることを報告してきた.カルパインは軟骨破壊や炎症の惹起に関与する中性プロテアーゼの一種と考えられるため,その阻害蛋白であるCSに対する自己抗体の存在はRAの病態に関与する可能性が示唆されている.本年度は抗CS抗体の定量的検出法を確立しリウマチ性疾患の診断における有用性を検討することを目的とした. 【方法】1)カルパスタチンの精製:Csをコードする全長cDNAをpET28aベクターに組換え,大腸菌BL21株でN末端His-Tagを付加した全長CSを発現させ,コバルトキレートカラムを用いて精製した.精製CSはマイクロタイタープレートに固相化し,ELISA法を開発した.2)リウマチ疾患患者血清のスクリーニング:RA67,SLE72,強皮症76,多発性筋炎・皮膚筋炎(PM/DM)69例,および健常人85例の保存血清を検体として抗CS抗体を測定した. 【結果】1)リコンビナントカルパスタチンの発現と精製:精製リコンビナントCSは110kDa附近に泳動され,従来の報告と一致した.このCSは各ドメイン特異的モノクローナル抗CS抗体および抗CS抗体陽性RA血清と反応し,ウサギm-カルパインの蛋白分解活性を抑制し,生理活性が保たれていることが確認された.2)RA自己抗原とリウマチ疾患患者血清の反応性:ELISAによる抗CS抗体の陽性率は,RA43%に対して,SLE30%,強皮症30%,PM/DM25%,健常人1%であった. 【結論】ELISA法による抗CS抗体の陽性率はRAで最も高かったが,これまでの免疫ブロツト法による成績よりも低頻度であった.
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