研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)では慢性増殖性滑膜炎により骨・軟骨破壊が起こり高度の関節変形を来す。昨年度,滑膜組織培養によるin vitro骨破壊モデルを確立した。 本培養系では,滑膜細胞が増殖,融合,極性化し骨吸収をきたす過程がみられ,RAの炎症性滑膜組織において滑膜細胞が破骨細胞に分化し,骨を破壊してゆく可能性が示唆された。そこで,滑膜組織培養における破骨細胞形成の分子メカニズムを明らかにするため,まずRANK/RANKLによるシグナル伝達系の関与,炎症性サイトカインの関与を検討した。 RA滑膜組織培養系にRANKLのdecoyreceptorであるosteoprotegerin (OPG)やOPG融合蛋白を添加すると,破骨細胞の形成やハイドロキシアパタイト上の骨吸収窩の形成は約40%抑制された。一方,骨髄細胞や末梢血単球培養にM-CSF, RNKL加え破骨細胞を誘導する系ではOPGはほぼ100%抑制した。滑膜細胞からの破骨細胞誘導にはRANK/RANKLが関与しているが,それ以外の誘導メカニズムも関与している可能性がある。現在,RA滑膜炎の病態にもっとも重要であると考えられている炎症性サイトカインはTNFαであり,TNFαによる破骨細胞誘導はRANKL非依存性であることが報告されている。そこで,RA滑膜組織からの破骨細胞の分化にRANKL非依存系のシグナルがどのように関わつているかを検討した。 TNFα受容体融合蛋白によりTNF blockingの効果を検討すると,TNF receptor II-Fc fusion proteinで骨吸収の有意な抑制がみられた。しかし,TNF receptor-Iの阻害では骨吸収は抑制されなかった。 TNF receptor IIやRANKL/RANKのブロックはRA骨破壊の抑制の戦略の1つと考えられる。 今後,IL-1の抑制やMCSF, VEGFの抑制が滑膜細胞から破骨細胞への分化にどのように影響しているのか明らかにしていきたい。
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