自己免疫疾患の病態解明と治療法の開発を目的として、自己抗原への免疫寛容成立の機序についての研究を行った。まず、抗原をIFAと共に腹腔内に前投与することにより、抗原ペプチド特異的免疫寛容の成立に成功した。研究を進めるうちに、この免疫寛容誘導には様々な細胞が密接に関与していることが明らかになったため、免疫寛容を維持するT細胞内のイベントを遺伝子プロファイルで比較するためには、in vivoで免疫寛容状態にある抗原特異的T細胞を大量に調整することが重要と考えられた。そのために、MBP特異的T細胞よりT細胞受容体(TCR)をクローニングし、トランスジェニックマウス(TCR-tg)を作成中である。また、同時にPLP特異的T細胞よりクローニングされたTCRのTCR-tgを入手準備中である。現時点で、入手可能であったTCR-TgであるDO11.10マウスを用いて、TCR-tgから抗原特異的T細胞を分離し、NaiveのBalb/cマウスに移入した後に、上記の方法で抗原ペプチド特異的免疫寛容することによって、通常の数十倍量の免疫寛容状態の抗原特異的T細胞を得ることができるようになった。DNAマイクロアレイでの検索のため、cRNA合成過程までの条件設定を行い、アフィメトリックス社DNA Gene Chipを用いた解析の準備を行っている。探索した遺伝子の機能解析には、目的とする遺伝子を効率よくT細胞に導入することが重要であるので、新規のパッケージングコンストラクト(pCL-ECO)とスピンインフェクション法を使用することにより、レトロウイルスベクターを用いてPrimary T細胞へ60-80%と非常に高率に遺伝子導入できる方法を確立した。TCR-tgのT細胞にも同様の効率で遺伝子導入することに成功したので、EAEを起こすTCR-tgのT細胞を用いて、EAE制御に重要と思われる遺伝子の機能をin vivoで解析できるようになった。
|