研究概要 |
【背景/目的】表面型大腸腫瘍は日本では数多く発見され,組織学的異型度も高く,腫瘍径の小さなうちに深部浸潤するとされているが,欧米からの報告は少ない。米国においても表面型腫瘍の頻度,生物学的悪性度は日本と同様であり,"米国では表面型大腸腫瘍は頻度,重要性ともに過小評価されている"という仮説を証明することを目的とした。 【方法】色素撒布(インジゴカルミン)を併用した日本と米国で同一のプロトコールを用いて,大腸内視鏡検査を行い,日米両国における表面型大腸腫瘍の頻度について比較,検討した。また,発見された表面型大腸腫瘍の臨床的特徴について解析した。 【結果】1.期間中,米国において211例にprospectiveに色素撒布を併用して大腸内視鏡検査を行い,48例(22.7%),66病変の表面型大腸病変を発見した。2.表面型大腸腫瘍はあらゆる人種から発見された。3.発見された表面型大腸病変のうち62%は色素撒布後に初めて発見され,色素撒布の併用は表面型大腸腫瘍の発見に有用であった。4.表面型大腸病変のうち88%(58/66)は腺腫であり,同期間中に発見された隆起型病変では67%(82/122)であり腺腫の頻度は隆起型に比較して有意に高率であった(P=0.033)。5.表面型病変のうち癌は4.5%(3/66)であり,同期間中に発見された隆起型病変の0%(0/122)に比較して有意に高率であった。一方,我々の表面型腺腫の頻度は14%(1057/8012)で表面型早期癌の頻度は21%(223/1055)で米国との間に差はみられなかった。【結論】米国における表面型大腸病変(腫瘍)の発見頻度は色素撒布を用いると,日本における我々の頻度と差はみられず,腺腫,癌の頻度共に隆起型に比べて高く,臨床的に重要であった。以上から米国では表面型大腸腫瘍が過小評価されている可能性が示唆された。
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